海豪うるる公式ホームページ | MARIの制作レポート

山中漆器「MARI」の制作

石川県・山中漆器の職人さんたちとのコラボレーションから生まれた創作漆器「MARI」。
デザインを海豪うるるが担当しました。誕生までの道のりを簡単にレポートします。

コラボレーションした山中漆器の職人さん
木地師・中嶋武仁、塗り師・亀田 泰、蒔絵師・山崎夢舟

ことの始まりは、ラグジュアリー国際会議

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2009年に石川県で開催された国際ラグジュアリー会議にモデレーターとして参加しました。それが本格的な山中漆器との出会いにもなりました。現代におけるラグジュアリーとは何か?石川の文化を世界へ発信しよう!という議論が交わされた会議で、多くの山中漆器と新たな職人さんたちと出会ったということも、「MARI」誕生への運命のようなものを感じます。


漆器デザインへの挑戦

山中の漆器職人さんたちと交流が続きました。蒔絵師の山崎夢舟さんから「漆器のデザインをしませんか?」というお話をいただいのです。料理の仕事に携わる者のとして、女性として、素晴らしい職人さんたちに器をつくってもらえるという嬉しさでいっぱいです。しかし、陶芸には取り組んだ時期もあるのですが、漆器は、木地と塗り、また蒔絵で作り上げる伝統工芸、「どのように作っていけばいいのか・・」という不安からのスタートになりました。「職人さんたちは私にどういうことを求めているのだろう」と考えていたとき、夢舟さんの「海豪さんが欲しいと思う器をデザインしてください」との言葉で、楽しんで挑戦することが出来ました。


漆器を学ぶ

DSC07260.JPG漆器の顔料
まずは、漆器をもっと学ばなければならいと思い、ゴールデンウィークを使って山中を訪ねました。木地作り、塗り、蒔絵のそれぞれの工程について職人さんが丁寧に分かりやすく教えてくださいました。何年、何十年と極めて行く技のエッセンスを、2~3日で素人の私に分かるように説明してくれました。その分かりやすい説明のおかげで、「MARI」のデザインが短期間で出来たと言っても過言ではありません。山中の職人さん達がそれぞれの技をいかに深く理解されているのかを示す説明力だったと思っています。
例えば、漆には同じ赤や黒でも、豊富なバリエーションがあります。色のバリエーションの上に、“艶なし”から、“最高の光沢を持つ艶”まで、艶には10段階ものレベルがあります。造形だけでなく、色と艶の組み合わせだけでも、無数のデザインが生まれるのです。


今の食卓に、食器として立脚するために

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私が伝統的なお椀やお皿のデザインを妙にアレンジしたような食器を作っても意味がないし、職人さん達もそのようなデザインを期待していないと思いました。悩みぬいた末、私は私の生活や食卓に欲しい食器を作ろうと決めました。私は自分のお料理の仕事の軸足を、「日常」におきたいと考えています。ですから、「日常」に使えるものと決めました。
女性にとって漆器に限らず器は魅力的。でも、マンション暮らしでは食器の収納も限られる。収納しやすい、または収納しなくてもよい食器があればうれしい。洋風な部屋の雰囲気に違和感なく、できれば、インテリアにもなる、小粋な感じでマッチする存在感が欲しい。再び悩みの日々・・ある時に気がついた・・私の部屋の鏡もドアの小窓、壁紙の模様などの“丸”。そうだ、私は“丸”が好きなんだ!
そうして「MARI」のデザインが固まっていきました。


コンセプト

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日常の中の非日常を楽しむ。非日常の中で日常を楽しむ器。
部屋に転がしてインテリアとして、食器として毎日使えるもの。

「見るたびに和む“真球”」「部屋に転がっていても可愛らしい大きさ」「外観の丸い感じと対象的に、器としては極めて薄く作ってシャープにして対比を楽しみたい」「日本では器を手で持ち、口をつけて、お料理を頂くのだから、口当たりはソフトに」「日常の器として使い勝手も大切。これ一つあれば食事ができる便利さも欲しい」「できれば1人のときも2人のときも、洋も和も、両方楽しめるもの」色々と自分の思う条件を頭に入れながら、紙にスケッチをしました。


構成

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5つの食器で7通りの使い方ができる。 5つの食器で七変化する器「MARI」。
椀2つ(汁湾・飯椀)、皿2つ(平皿縁あり・上げ底にもなる縁なし皿)、高台兼ナフキンホルダー兼箸置き。
また、見え方にも変化がある。光沢とマットのコントラスト。黒一色の世界。黒と赤のコントラストなど。


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写真も撮る私ですが、きっかけは白黒写真に魅せられたこと。写真の黒に引き込まれました。漆黒の黒。洋風のお部屋にも合うし、迷わず黒を選択。そして、黒と赤の両面使いの器も取り入れました。黒に対比するのは真紅の赤。対比を楽しみました。この2色なら、お料理が映えることうけあいです。


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艶は一番のツヤあり。中を艶無しにして対比を楽しむ。一方、平皿縁無しは両面使い。
一番のツヤありと、艶がないもの両面使いにしました。通常は、艶があまりないほうにお料理を盛りますが、あえて逆にツヤツヤを内側にしてお料理を盛りました。艶で、お料理が一層映えます。


山名漆器職人“魂”!?

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確認などで職人さん達に電話連絡をすると、職人さん達は仲間といつもお酒を酌み交わしてご機嫌状態です。夜ならまだしも、かなり明るいうちから・・!?しかも、本当に毎回・・!?
でも、完成品を見て思いました。「お酒も山中漆器職人の“魂”の一部だったのね・・」
作品は、精緻な技による魅力だけではない、得も言えぬ独特の魅力をまとっているのです。何か職人の“魂”のオーラというかベールみたいなもので、艶やかに覆われているのです。


命名

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「うるるさん、作品に命名をお願いします」
デザインの依頼をお受けしたときと同じくらいとまどいました。
職人さん達の魂が結実した作品に名前を付ける重さ。「100年、200年と受け継がれる作品を僕達は作っている」と言う山中の職人さん達。100年後に私が存在しているはすはない。だとすると、何かのご縁でこの作品の誕生にかかわり、ほんの短い間で私が作品を預かっているのだと思いました。そうした作品との関係性を思うと、その誕生に際して命名を出来る幸運にたじろいだのです。この時、山中漆器との出会いをしたラグジュリー国際会議で感じた思いが浮かびました。
「世界へ私たちの持ってる良いものを素直に差し出せば、必ず共感と感動を持って受け入れられる」
みやびでかわいい毬のような姿の作品。海外でも口にしやすいように「MARI」と命名!


『MARI』披露

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「MARI」の正式なお披露目は、山中漆器の組合イベントでした。山中について脳科学者の茂木健一郎さんとの対談でしたが、なんだか私の緊張は二人分のように感じました。もちろん、もう一人分の緊張は「MARI」の分です。そんな気持ちで「MARI」と一緒に壇上に上がりました。


茂木健一郎さんを唸らせた!

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茂木さんとお話がすすみ、話題は「MARI」へ。私が「MARI」についての説明を終えると茂木さんが「その手があったか・・」「なるほどありですね、漆器の新しい可能性の一つですね」と感心してくれたのです。私と「MARI」のまさに晴れ舞台になりました。


食、漆器、MARI

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漆器の美しさは、凝縮された美だと感じます。色と艶、木地の薄さ、形の全てで漆器の美しさを構成します。全ての要素がお椀なりお皿になりに凝縮するのです。
こうした凝縮した美を放つ器は、お料理を美味しそうに見せる最高の道具と言えます。
漆器は、お手入れ(ちゃんと乾かす、直射日光にあてない等)は必要でも、耐久性に優れ、万が一の時でも修復のきく“一生もの”の器です。器としても生命の強さも、美しさの一つでしょう。
「MARI」は、漆黒の表面を覆う“魅せる蒔絵技”に加え、球体を2つに分けると、真っ黒と真っ赤の対比も楽しめるデザインです。さらに、山中漆器の特長の1つである、木地の美しさも楽しめます。薄く、自在な形を作る木地師の技が「MARI」の真球で薄い木地を作り出してくれました。そうした木地に、高い塗りの技術なくしては漆器に仕上げることはできません。塗りが完璧でないと、ムラがでたり耐久性が確保できなくなるからです。木地師と塗り師、蒔絵師の素晴らしい連携があって実現したのが「MARI」です。


後記:

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TVでもお馴染みの「お宝鑑定」。鑑定士が「これはおそらく当時の大名が○□△したものに違いない」などと推測を交えながら鑑定していきます。もしもこの「MARI」が、100年後に鑑定されたら!?
―「球体とは珍しい。しかし寸分の狂いなく合わせてきています。腕の良い木地師です。塗りや艶の選択も珍しい組み合わせです。お茶事でもなく日常の器と思われますが、これでもかという蒔絵の技術がちりばめられています。模様も伝統的ではありません。不思議です。おそらく腕の良い職人に富豪が思うものを作らせたのでしょうか?」―などと推測されるのでしょうか。私が今預かっているこの「MARI」は、いったいその時、どのような方の手元にあるのだろうか空想が膨らみます。
そのような空想をしていたとき、現代の伝統工芸とのかかわり方が少しわかった気がしました。100年、200年昔の器から、当時生きた人の生活や文化、想いに触れ、実際に自分の時代なりの楽しみ方で使って触れる、豊かさの御裾分けを先人と先人から受け継いだ文化から頂ける贅沢さと幸せを感じます。


● 購入、お問い合わせは、下記へ

山中商工会 TEL: 0761-78-3366 E-mail: yamanaka@shoko.or.jp
石川県加賀市山中温泉西桂木町ト5-1山中温泉文化会館1F